世界の中心は彼らで回っている

勝利六人組。グループ内の年齢差およそ10。私との年齢差およそ18〜28。

岡田さんとのハイタッチレポ 【9月19日 横浜公演】

 ハイタッチと言っても、岡田さんは私の存在をあまり認識していないと思いますが。  私生活でやることがあまりないし、公演から1週間以上経ったのにまだ夢見心地みたいなフワフワした感じで日常を送っているので、忘れない内に書いておこうかなぁ、と。

◯岡田さんとのハイタッチ

 岡田さんが来られたのはスタンド5列目と6列目の間にある通路。私の席はスタンドの6列目だったので、通路最前。視界を遮るものもなく、会場全体を見渡せる席でダンスのフォーメーションも上からバッチリ見えて最高でした。トロッコを使うことなく、岡田さんふっつーにスタスタ歩かれてました。こういうのって普通トロッコに乗ったりするものではないのかね??V6だけか??他メンバーもセンター席にトロッコで行ったり、真向こうのスタンドに行かれたり。長野さんは私の席側のアリーナ通路に行かれてて、結構近めの距離で存在を確認出来ました。

 MCで捌けた後に映像が流れて、映像終わりからかかるイントロと共に客席に現れるV6。近くにV6が来たブロックでは「きゃー!!!!」という黄色い歓声が。私はと言うと、「さすがにここまでは来ねぇだろ」って思ってました。横浜アリーナの座席をあまり把握してなくて、どこかの通路に岡田さんが来たことは分かったんですけどね。自分の目の前の通路を歩いてるなんて思いもせず。

「岡田来るんじゃない?」

 というお隣さんの話に「えっ?!」と思わず声を出してしまった。そりゃそうだろう。目の前に。日本アカデミー賞W受賞の。V6の中ではただのオカダの。私をV6に引きずり込んだ一因である、あの岡田准一が。私の目の前に来る。あと50mちょいで、岡田さんが私の目の前に。

 そう思ったら、なぜか脳内の思考が一気に冷めた私は異端でしょうか。「岡田さんが来る!!!!!!」みたいな感じではなく、「あっ、岡田さん来るんだー」みたいな。規模はかなり違うが、「家の目の前にコンビニ出来るんだってー」のような感じである。

 よく考えてみて欲しい。いくら自分達のファンであるとはいえ、彼らは不特定多数の他人に触られるのだ。‥私だったら嫌かなぁ。アイドルという職業を生業にしていて、20年近く続けている彼らはそのようなことは感じないかもしれないが。

 勿論、触れてみたいという気持ちも分かる。私も触れてみたい。それでも、先日に見掛けた10周年ライブの大阪公演での出来事も思い出し、歩きながら歌う岡田さんの身体を触るのは気が引けた。

 まぁ、と言っても触れてみたい欲望もあるわけで。だって目の前に岡田准一ですよ?目の前にV6メンバーですよ?こんなこと二度と無いかもしれないじゃないですか。ていうか寧ろ最後ですよ、こんな神席。しかも岡田さんですよ?岡田さんて言ったら長野さんの尻よく触るじゃない?ていうことは置き換えてみればつまり、岡田さんという媒体を通じて私は間接的に長野さんの尻に触った、又は長野さんの尻に触る‥ということになる(今落ち着いて文面に表してみると何とも気持ち悪い発想だが、当時の私は5秒に満たないくらいの時間でこの結論に至ったのだ)。

 でもやっぱり躊躇する自分もいたので、間を取って‥という意味には成り得ませんが、グーッと腕を伸ばすのではなく、そっと腕を伸ばして岡田さん待機。お隣さん達は皆さん腕を目一杯伸ばされていたので、私のところだけ変に引っ込んでて、下手したら岡田さんに無視されてもおかしくない。逆にこれが私を安心させた。「これで岡田さんとハイタッチ出来たら岡田さんから腕を伸ばしてくれたってことになるから、純粋なファンサとして受け止められる」そう思った。

 こんなことを考えていたら、あっという間に岡田さんはすぐそこに来ていた。大きくなる歓声。伸ばされていた腕が更に前へ、前へ。近くで見た岡田さんは当たり前だけど、ただの人間だった。筋肉の量は凄いけど、皮膚の軟さとかは私達と多分何ら変わりない。伸ばされている腕の中に爪が凄く長い人がいて‥その人の爪で引っかかれたら、強靭な彼の腕も皮膚を破かれるだろう。

 岡田准一は「アイドルを職業とした」「俳優業のために身体を鍛えている」ただの人間だった。

 岡田さんが私の目の前に来るまであと5m。そして私は気が付いた。「これ絶対岡田さんまで届かねぇわ」。皆さんが腕を伸ばしているのは岡田さんまで腕を届くようにするため。私はそこまで伸ばしていないため、ガチで岡田さんが腕を伸ばしてくれないとハイタッチが出来ない、そんな微妙な距離感を生み出していた。

 でもこれ以上腕を伸ばすのは気が引けるし。ここで引っ込めるのは岡田さんに失礼な気もするし。「さよならハイタッチ」そんな風に思いながら手を伸ばしていた私。その私の目の前に差し掛かる岡田さん。  

 チラッと横目で私を見る(もしかしたら私の持っていた長野さんの公式うちわを見られたのかも)。

 唇の片端を上げて笑う(堂上教官のような大人の余裕がある笑み)。

 若干腕を伸ばす(本当に若干)。

 軽く手を握る(赤ちゃんが指を掴むようなそんな軽さ。但し手のひらの硬さは赤ちゃんなんてもんじゃない)。

 上下に1回振る(俗に言うhand shake)。

 何事もなかったかのように次の人とハイタッチ。

 実話ですよ?

 岡田さんとのハイタッチ(握手と言った方がいいかもしれないが)の後、ボロボロ涙が出て来た。岡田さんと触れ合えたことの喜びか、悲しさか、はたまた腕を伸ばすという動作を行ってくれた岡田さんに対しての申し訳なさか。拭っても拭っても涙は止まらなくて、身体を前に出せば岡田さんのことをまだ近くで見れるのに、私が探したのは1階下のアリーナ通路にいる長野さんだった。アリーナのファンの方々に手を振って笑顔を見せる長野さん。スタンドの方は一度も見ずに(私が見ていた限りの話で、もしかしたら何度か見てくれたかもしれない)、ファンサを行う長野さんを見て酷く安心した。

 岡田さんの手の感触は未だに覚えている。私が今まで触れた人の手の中で、一番硬い手をしていた。

 コンサートなんて無かったかのように前と変わらず日常を過ごす中で、「フワフワしてるね」「嬉しそう」「笑顔が増えた」と、よく言われるようになった。多分V6の影響だろう。1回限りのコンサートが終わってしまった悲しみよりも、1回だけでもコンサートに行けて良かったという充実感が大きいのだ。コンサートの細かい記憶は消えても、楽しかったという感情は多分覚え続けていられそうだ。ふとした瞬間に、例えばコンサートで披露された曲を聞いて思い出したりするだろう。

 それでも時々思う。もし目の前に来るのが岡田さんではなくて長野さんだったら、私はどうしていただろう。どうなっていただろう。周りと同じように目一杯腕を伸ばしただろうか。岡田さんの時と同じ、そっと腕を伸ばしただろうか。そもそも腕を伸ばすことをするだろうか。嬉しかったと笑えていただろうか。気付かれずに悲しかったと泣いていただろうか。長野博というある種の聖域に触れなくて良かったと安堵するのだろうか。